──予測思考を磨くリアル症例教育──
はじめに
新人教育の中でも特に難しいのが、
「急変につながる兆候を予測する力」=予測的臨床推論 を育てること。
知識として「肺塞栓症」を知っているだけでは意味がありません。
“どの場面で疑うのか?”
“どんな情報を優先して集めるのか?”
“なぜ危険なのか?”
これらは 現場での問いかけ(スキャフォールディング) でしか育ちません。
今回は、新人看護師が わずか10分で“肺塞栓を疑う力”にたどりついた実例 を紹介します。
■ 症例:動けなかった患者さんが、動いた途端に…
ある日のこと。
新人看護師と一緒に、転院搬送が入る患者さんの情報整理をしていました。
その患者さんは──
- 骨折
- 整形外科手術後
- 長期間の安静
- いざ離床したら胸痛と呼吸苦
ここまで揃えば、私たち経験者なら瞬時に
「肺塞栓の影があるかもしれない」と考えます。
でも新人看護師は、まだ“つながる経験”が足りません。
私:「この患者の状況から、何を疑う?」
新人看護師👨:「ろ…労作性狭心症…ですか?」
内心「そこ!?」と思いましたが(笑)、
否定すると考える力は止まるため、あえてヒントを小出しにします。
- 手術後
- 安静が長い
- 急な離床で発症
- DVTの説明したこと、覚えてる?
ここで、新人の表情が変わりました。
新人看護師👦:「血栓が飛んだ‼️……ですか?」
私:「正解。」(満点の笑顔で👏)
“考えがつながった瞬間” こそ、一番伸びる瞬間。
■ そこからさらに深める「問い」
私はすぐ答えを与えず、考える順番を作ります。
✔ 造影CTで確認すべきは?
✔ 血栓はどこに飛びやすい?
✔ 右心負荷の所見は?
✔ ショックになる可能性は?
✔ 生命に直結する要因は?
新人看護師は、最初より格段に速く・深く答え始めました。
肺塞栓と新人看護師がわかれば、その後を結びつける力は持っています。
それをいかに発揮で切る問いかけができるかが、先輩看護師に問われます。
10分とは思えないほど、目つきが変わる。
■ この10分で育った“臨床推論のコア”
① 「症状の背景」から疑う力
症状そのものではなく、
**その症状が“なぜ起こり得るのか”**を考えられるようになる。
② 急変リスクを予測する“救急の目”
PEは一歩間違えれば致死的。
新人看護師が恐れず、論理的に向き合えるようになる。
③ 行動につながるアセスメント
新人看護師自身が導いた結論だから、次回の受け入れでもつなげることができます。
■ なぜ10分で新人が伸びるのか?
✔ 質問で「迷子ポイント」を特定できる
何が分からないのかを把握したうえで、必要なヒントだけ渡す。
✔ 思考の“余白”が成長になる
すぐ答えを言わないから、脳が動く。
✔ 成功体験として残る
“自分で気づけた”ことは、一生忘れない。近い答えが出たらすかさず褒める👏
■ 臨床推論を教えるとは、正解を教えることではない
新人教育のゴールは、
新人看護師が自分で考え、判断できる土台を作ること。
そのために必要なのは知識よりも、
- 質問
- ヒント
- 余白
- 安心感
この4つだけ。
新人看護師の“わかった!”の表情は、教育者にとって最高の瞬間。
私はこれからも
現場の10分を、誰かの未来につながる10分にしていきたいです。



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