新人看護師から質問されたとき、
「これは〇〇だよ」
と答えを教えれば、その場はすぐに解決します。
忙しい病棟では、そのほうが早いこともあります。
でも私は、すぐに答えを教えないことがあります。
代わりに、
「あなたはどう思う?」と聞きます。
少し意地悪に聞こえるかもしれません。
でも、答えを知らないから聞き返しているわけではありません。
新人看護師に、自分で考えて判断できる看護師になってほしいからです。
看護師は「答えを知っている」だけでは足りない
看護の現場には、教科書どおりにいかないことがたくさんあります。
同じ疾患でも患者さんによって状態は違います。
昨日と今日でも違います。
だから、
「〇〇のときは△△する」
という知識だけでは対応できないことがあります。
必要なのは、
目の前の患者さんの情報を集めて、自分なりに考え、判断する力。
つまり、アセスメントする力です。
私はこの力を、新人のうちから少しずつ育てたいと思っています。
「どうしたらいいですか?」と聞かれたとき
例えば新人看護師から、
「血圧が低いんですけど、どうしたらいいですか?」
と聞かれたとします。
もちろん、患者さんの状態によってはすぐに対応しなければならない場面もあります。
でも緊急性がなく、一緒に考える時間があるなら、私はすぐに答えを言うのではなく、
「血圧以外はどう?」
「いつもと比べてどう?」
「何が原因だと思う?」
「今、一番気になることは何?」
と問いかけます。
すると新人は、もう一度患者さんの情報を整理し始めます。
血圧だけではなく、
意識状態はどうか。
脈拍はどうか。
尿量はどうか。
薬剤の影響はないか。
出血はないか。
患者さん本人に症状はないか。
一つの数値から、患者さん全体へ視点が広がっていきます。
私は、この過程が大切だと思っています。
答えを教えれば「早い」。でも、その次は?
もちろん、答えを教えることが悪いわけではありません。
新人がまったく知らないことなら、まず知識を教える必要があります。
緊急時には、考えてもらうことより安全を優先します。
忙しくて十分な時間を取れないこともあります。
だから私は、
「何でも質問で返せばいい」とは思っていません。
大切なのは、
今は教える場面なのか。
それとも、
考えてもらう場面なのか。
そこを教育する側が判断することだと思います。
私が「あなたはどう思う?」と聞く理由
答えを教えれば、その場の問題は解決します。
でも次に似たような患者さんを受け持ったとき、また誰かに答えを聞かなければならないかもしれません。
一方で、
「自分は何を見たのか」
「そこから何を考えたのか」
「次に何を確認する必要があるのか」
を繰り返し考えていると、少しずつ自分で判断できるようになります。
看護師は、いつも誰かが隣にいて答えを教えてくれる仕事ではありません。
夜勤もあります。
急変もあります。
自分で患者さんを見て、
「何かおかしい」と気づかなければならない瞬間があります。
だから私は、
答えそのものより、答えにたどり着くまでの考え方を身につけてほしい。
そう思っています。
問いかけるだけでは、教育にはならない
ただし、
「あなたはどう思う?」
と聞けば、それだけで考える力が育つわけでもありません。
新人が答えられず困っているのに、
「自分で考えて」
だけで終わってしまえば、それは教育ではなく丸投げになってしまいます。
考えられないなら、少しヒントを出す。
情報が足りなければ、
「じゃあ、何を確認したら分かりそう?」と一緒に考える。
考えた内容が違っていたら、
「どうしてそう考えた?」と、その思考過程を確認する。
そして必要なところは、きちんと教える。
答えを教えないことと、放置することはまったく違います。
「正解できたか」より「どう考えたか」を見る
新人教育をしていると、つい正解・不正解で見てしまうことがあります。
でも私は、
「正しい答えを言えたか」
だけではなく、
「そこまでどう考えたのか」
を見ることも大切だと思っています。
考え方が分かれば、その新人がどこでつまずいているのかも見えてきます。
知識が足りないのか。
情報収集が足りないのか。
情報は集められているけれど、つなげられていないのか。
そこが分かれば、次に必要な教育も変わります。
答えを教えない教育は、少し時間がかかる
正直、全部教えたほうが早いこともあります。
教育する側に余裕がなければ、
「もう私がやったほうが早い」と思う日もあります。
それでも、すべて答えを渡してしまえば、新人が考える機会まで奪ってしまうかもしれません。
だから、時間が許す場面では問いかける。
そして、一緒に考える。
今日の業務を終わらせるだけではなく、その人がいつか一人で判断できるようになることまで考えて関わる。
それが、私が新人教育で大切にしていることです。
教えることより、「考えられる人」を育てたい
教育担当の役割は、たくさんの知識を教えることだけではないと思っています。
分からないことに出会ったとき、
何を確認すればいいのか。
集めた情報をどうつなげるのか。
そして、自分はどう考えるのか。
それを自分で組み立てられる看護師を育てること。
だから今日も質問されたら、すぐに答える前に一度聞いてみます。
「あなたはどう思う?」
その数秒の「考える時間」が、いつか一人で患者さんを守る力につながると私は思っています。


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